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◎「3人の親」を持つヒト胚を作成

「3人の親」を持つヒト胚を作成


英国の科学者チームが、3人の親を持つ胚を作成した。

ニューカッスル大学の研究者たちは、生殖補助医療の過程で作られた胚から核を取り出し、それを、もとからあったDNAを除去した卵子に入れた。この卵子の提供者のミトコンドリアは残されたままだ[ミトコンドリアは卵子の細胞質に約25万存在する]。

つまり、完成した胚には、3人から提供された遺伝子が含まれていることになる。

この技術は、ミトコンドリアに関わる病気を防ぐことを目的としたもので、ロンドンにある医療審議会(MRC)のCenter for Neuromuscular Diseases(神経筋疾患センター)に、先週提示された技術だ。英国の『Telegraph』紙が5日(現地時間)の未明に初めて報道した[生殖補助医療の過程で廃棄される10個の胚で実験し、移植後5日間ほど生存、その後規定により廃棄したという。また、別のマウス実験で、新しいミトコンドリアを持つ子どもが生まれたことが確認されたという]。

ミトコンドリアは、身体のあらゆる細胞に存在する細胞小器官で、化学エネルギーを運動エネルギーに変える働きをしている。

ミトコンドリアに関わる病気が発生することはまれだが、発生した場合の症状は重い。従来の方法で作られた胚に、欠陥のあるミトコンドリアが含まれていた場合に、それを置き換えるために、ニューカッスル大学の方法を利用できる可能性がある。

『Telegraph』によると、英国のHuman Fertilisation and Embryology Authority(ヒト受精・胚機構)は、ニューカッスル大学の研究者たちに実験を続ける許可を与えており、大学では3年以内に臨床治療を開始したいとしている。

ところで、この方法で子どもが生まれた場合、3人の親を持つことを意味するものではないという意見もあるが、これは間違いだ。

科学者チーム(および、素早く反応した読者の1人)は、今回の方法を使った場合でも、胚のほとんどすべてのDNAは2人から提供されたものになると述べている。


核が取り除かれた卵子を提供する「3人目」が胚に対して提供するものは、37個の遺伝子しか含まれていないミトコンドリアだからだという[ミトコンドリアには、核内にあるDNAとは別のDNA(ミトコンドリアDNA)がある]。

たしかに、ヒトの遺伝子数が2万3000個程度と推測されていることに比べれば、37個というのは少ない。しかし、量が少ないから影響がないというわけではない。われわれの身長や目の色、あるいはもっと微妙な特質である性格や好みなどにミトコンドリアが影響を与えることはないかもしれないが、ミトコンドリアには、化学エネルギーをわれわれの細胞が使える形のエネルギーに変えるという恐るべき務めがあるのだ。

読者がこの記事を読むときも、ミトコンドリアは読者の身体のあらゆる細胞の中でせっせと働いている。これらを取り除くと、つまり、この37個の遺伝子が入った細胞小器官を例の胚から取り除くと、生命は存在できないのだ。

さらに、ガンや心臓病からアルツハイマー病まで、さまざまな疾患の根源にはミトコンドリアの機能不全がある(日本語版記事)と考える科学者の数は増え続けている。ミトコンドリアの変性は、老化とも関連している(話は少しそれるが、私は昨夏以来、ミトコンドリア療法の記事を保留にしている(非常に忍耐強い編集者には深くお詫びする!)。

親たちのうちの1人が子どもに与えるのは自分のミトコンドリアだけだったとしても、提供されるものは大きいのだ。もし、将来今回の技術が一般化され、「遺伝子のアイデンティティー」に苦しむ子どもに出会ったとしたら、私なら次のように言うだろう。「こう考えてごらん。君は2人の親から1台の車をもらったが、そのエンジンはもう1人の親が作ったんだ」

そしてもちろん、遺伝的特徴のことで悩むのはやめるようにとアドバイスするだろう。自分が誰であり、何を意味するのかは、DNAの螺旋構造からは推測できないからだ。

ただしこれは別の議論になる。当面の間は、この方法で生まれた子供は3人の親を持つと理解するべきだろう。

もし、これが理解できない人は、この研究に資金を投じるよう米国政府に働きかけよう。

追記:1つの器官を誰かに提供したからといって親になるわけではない、という反論があるかもしれない。しかし、「受精の瞬間に近い状態にある生命にとって欠かせない生物学的素材の提供」と考えれば、違って感じられると思う。

[2001年には、米国セントバーナバス医療センター生殖医科学研究所の不妊治療において、第三者の卵子の細胞質を利用した結果、「3人の親」の遺伝子を持つ子どもが複数誕生していたことが報道された。この不妊治療自体は1998年に行なわれたもので、論文はMolecular Human Reproductionに掲載されているという。]

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